情熱のリトルガール

(前編)

ちょっと思いついた事があったんで書きました。

フルメタの世界でオリジナルキャラが動き回ります。

ちなみに、モデルは「あの人」です(笑)


 

『今日こそ伝えよう・・・あたしの想いを、あの人に・・・』

 

陣代高校前の通学路を、トレーナー姿の小柄な少女が走り抜けていく。

予鈴10分前なので生徒の姿がかなり多い。

道を歩いている3人ぐみの横で、走っていた少女の足が不意に止まった。

「あ、カナちゃん、恭ちゃん、ソースケ君、おっはよー!」

呼びかけられた3人がそれぞれに挨拶を返す。

「うむ、今日も頑張っているな」

「あ、まきちゃん・・・」

「槙原さん、おはよー」

まきちゃんと呼ばれた少女・・・槙原 理緒は笑いながら汗をタオルでふき、

「相変わらずカナちゃんは朝に弱いね〜。あたしと一緒に走らない?目ぇ覚めるよ」

「遠慮しとく・・・あんたのペースにあわせてたら、授業が始まる前に死んじゃうわ・・・」

苦笑しながらかなめがつぶやく。

「あもうこんな時間!早く着替えなきゃ予鈴が鳴っちゃう。じゃあね!」

と、言い残して走り去っていった。

「相変わらず、嵐のような娘ね・・・」

「そうだね」

「しかし、今日の槙原は何か変だ」

かなめは訝しい顔をしながら宗介に、

「そう、いつもどうりの気がするけど」

「いや、いつもより何か高揚しているような気が・・・俺の気のせいだといいが・・・」

「試合が近いからでしょ。彼女、女子ボクシング部のエースだし」

「それより早く行かなきゃ。もう予鈴なっちゃうよ」

恭子の呼びかけで3人は学校へ入っていった。

 

昼休み。

「宗介の言う通りね、なにか変だわ」

かなめの言う通り、今日の彼女は何かがおかしい。

授業中も一人で顔を真っ赤にしたり、そわそわしたりしている。

「風間、彼女について何かしらないか?」

宗介の問いに横にいた風間が懐をごそごそと探り、メモ帖を取り出す。

「えっと・・・槙原さんだね。陣校ボクシング部のエースで恋人にしたくないアイドルNo.2、またの名を「ハリセンクイーン」。慎重153cm、体重は・・・減量で変化するから不明。3サイズも・・・不明」

「69 50 70だよ」

いつのまにか現れた小野寺が風間に言った。

「なるほど・・・」

風間がメモを取る。

「随分詳しいのね・・・」

小野寺の背後から突然、槙原の声が聞こえた。

「なんで3サイズまで知ってんのよー!」

『すぱぱぱぱぱぱ〜ん』

どこからともなく取り出したハリセンで小野寺が張り飛ばされる。

「ぐあぁぁぁぁ・・・お前の母ちゃんが教えてくれただけなのに・・・」

「だからって気軽に他人に教えるんじゃな〜い!」

『すぱぱぱぱぱぱ〜ん』

「ぐはぁ!」

「ったく、あの馬鹿親は・・・」

力尽きた小野寺の横でかなめが、

「そーいえば・・・まきちゃんとオノDって幼馴染なんだよね?」

「認めたくないけどね・・・小学校からの腐れ縁よ。」

苦笑しながらつぶやく。

「で、話は変わるけど何で今日はそんなにそわそわしてんだ?」

「復活すんのはやいわね〜・・・」

突如復活した小野寺に、かなめが感心した様につぶやく。

「慣れてるからな。」

何事も無かったように言う。

「そんなこと・・・、あんたには関係無いでしょ!」

急に顔を真っ赤にして、とげとげしい口調で怒鳴る。

「他人の事をあんまり詮索しないでよね!」

そう言うなり席に戻ってしまった。

「一体、どうしたんだろう?」

「後をつけてみよう。何者かに脅されている可能性があるやもしれん。」

恭子のつぶやきに宗介が言う。

「それは無いと思うけど・・・いいわね。じゃあ、放課後に。」

「面白そうじゃん」

子供がおもちゃを手に入れたような表情で、かなめと小野寺が言ってきた。

「あんたたちはどうする?」

「僕はやめとくよ」

「あたしも。こういうのあんまり好きじゃないし。」

恭子と風間は不参加の意をあらわした。

「そっか、じゃあしょうがないよね。」

「よし、じゃあ放課後に」

小野寺はそう言って席に戻った。

 

・・・放課後の体育館裏・・・

「ここは・・・以前、千鳥が襲われた場所だな。」

そう言って油断なく銃を構える宗介にかなめが、

「あれはあんたのせいでしょうが!佐伯さんにはきちんと謝った?」

「肯定だ。俺のもつ技術を全て使って謝罪した。」

「あんたが謝りに行った後に佐伯さん、3日間学校休んだのよねぇ〜。」

ジト目で睨むかなめに、宗介が脂汗を流す。

「静かにしろよ、バレちまう・・・。あ、向こうから誰か来たぜ!」

小野寺の声に二人もそちらの方を見る。

「あの人は、剣道部の3年生ね。前に見たことあるわ。」

「何か話すみたいだな」

宗介はそういって手元に用意してある集音機のスイッチを入れる。

「そんなもんいつのまに用意したんだ・・・」

「静かに。何か喋っているぞ。」

宗介の一言に、二人もあわてて聞き耳を立てる。

『すいません先輩、突然呼び出したりして。』

『槙原さん・・・だっけ?で、僕に何の用?』

集音機から二人に声が聞こえてくる。

『あの、突然ですが・・・私と付き合ってください!』

!!!

かなめと小野寺が、あまりの衝撃に固まってしまう。

『う〜ん、いいよ。じゃあ、部活が終わったら一緒に帰ろうか。』

しばらく考えた後、男はそう答えた。

『はい〜!』

嬉しそうな声の向こうで驚く二人。

顔を見合わせて、

「まさか・・・こんな展開とは・・・」

「あのハリセン女が?マジかよ・・・」

驚く二人とは対照的に、なぜか宗介は訝しげな顔をしている。

「どうしたの?なんか難しい顔をして。」

「いや、なんでもない。めでたいことだ。」

騙し合いの戦場で育った宗介は、男の様子に何か気づいていた。

『奴のあの言葉・・・本心では無い。何かあるな・・・』

去って行く二人の背中を見つめながら、誰にも聞こえない声でつぶやいていた。

つづく

 

 

驚きを隠せないかなめたちを尻目に幸せそうな理緒。

このままべたべたなラブストーリーで終わるのか?

そして、宗介が気づいたものは?

次回「情熱のリトルガール(後編)」をお楽しみに。